一体誰の許しを得て北風は吹くのか。
どこかの機関が許可証を発行したおかげで、ここまで寒いに違いない。 少し前までは「あちいあちい」と茹だっていたにも関わらず、 気がつけば師走はもうすぐそこ。 設計と言う仕事がら、なかなか表に出向く機会が少ないため、 必然と季節の移り変わりを実感する機会も少なくなる。 しかしながら。僕は毎度の冬を実感する音を持っている。 ふぃー、と鳴るのだ。鼻が。 毎年気がつけば鳴り始め、気がつけば鳴り止む。 風邪を拗らせている訳でも、鼻が詰まっている訳でもない。 通常の鼻呼吸をする分には主張して来ないのが幸い。 とは言え、毎年ともなればもどかしいのもまた事実。 痺れを切らしたのは高校生あたりの冬。 こんな僕と言えども当時は華の高校生男子。 カッコ悪いのは気になってしまうお年頃。 なんで毎年ふぃーふぃーするんだちくしょう。 まさかあなたの知らないうちに大変な事態になっている、なのか? 遂に、近くの耳鼻科へ赴くことにした。 事の成り行きを話し、レントゲンも撮ってもらう。 一旦、待合室へ戻り再び呼ばれて診察室へ。 さあどんな診断でも下してくれよお医者さん、と意気込み先生の前に座る。 「ああ、鼻曲がってるねえ。はっはっは。」 相手は高校生。笑いながら鼻が曲がっている、とは何と残酷な宣告か。 曰く、鼻の中の軟骨が少しばかり捻くれているらしいのだ。 故に空気が乾燥する冬になると笛の如く、ふぃーふぃー鳴るのではないかと先生は言う。 だから気にする事でもないのか、と言えばそういう訳でもないらしい。 何でも人によっては鼻の通気が悪いため、 鼻炎畜膿炎その他の症状が癖になってしまう人もいるという。 「鼻をグイっとやって、軟骨をベキっとすれば鼻の通りが良くなるよ」と先生。 そ、そんな怖いこと出来ない。出来る訳ない。 僕はこれからもこの鼻と生きていきます。 あれからもうすぐ10年。 今年もまた冬がやって来る。
by ai-labo
| 2016-11-30 12:00
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